”縄文ブーム”の陰に現代人の寂しさや将来に対する漠然とした不安があるように思えてならない。
「土偶女子」をはじめ広がりを見せる「縄文ブーム」。「縄文」の魅力とは何なのか、信太謙三氏がを語る。
原作は小生の小説『天孫降臨』(花伝社)。透明感のある美しい絵に定評のある女性漫画家、竹姫(ちくひめ)さんが作画を担当。編集担当を含め3人は連絡を密にしながら縄文社会をできるだけ忠実に再現するため努力を重ねた。その際、近年の発掘調査やDNA鑑定技術の飛躍的な向上によってわかってきたことが大いに役立った。
とはいえ、文字による記録は、日本においては、和銅5年(712年)に太安万侶が編纂し、元明天皇に献上された日本最古の歴史書とされる「古事記」や舎人親王らの撰で養老4年(720年)に完成した正史「日本書紀」に待たねばならず、それ以前の倭人に関する文字の記録は中国の歴史書に頼るしかなく、文字数もそんなに多くない。
このため、「古事記」や「日本書紀」の神話部分を単なる絵空事と考えず、実際の人間の営みととらえ、発掘調査やDNA鑑定の成果を基にして想像力を膨らませ、物語をできるだけ史実に近い形で展開していくように努めた。この過程で登場人物のセリフのチェック中に竹姫さんから「桜の花は描いてもいいですか?」「勾玉は弥生時代からではないですか?」などといった質問が飛んできたこともあった。
これに対し、小生はその都度、資料をもう一度ひっくり返し、「ソメイヨシノは江戸時代からですが、山桜はあったようです」とか、「勾玉は相当古い縄文遺跡からも出土しています」などと答え、担当編集がそれを再確認。3人は徹夜も辞せずの覚悟で作品作りを進めていった。
このため、竹姫さんは連日の徹夜で何度も倒れそうになったという。それもこれも誰もが目にしたことのない縄文時代を紙上に再現するためで、こうした努力の結果、本著において縄文時代晩期の我が国の実情を相当正確にビジュアライズすることができたのではないかと思っている。
KEYWORDS:
『新日本縄文書紀』
著者:竹姫,信太謙三
定価:(税8%) 1296円
判型 : 単行本
刊行年 : 2019.05.20
入念な古代史研究に基づく、もう一つの立国史。集落を導く「日輪の神の巫女」、ポポ。
大陸からの来襲に立ち向かう「大王」、タケ――。
日本に国が誕生するまでを描いた本格縄文エンタメ小説『天孫降臨』を漫画化。難しい古代史研究の内容をビジュアルで学べ、小説としても楽しめる学習漫画。
漫画は、『女性自身』で連載し人気を博した『時遍路』の竹姫。